引き金引いてサヨウナラ


火事?

それにしては……


布越しにすらわかるほど、窓全体が赤々と照らされていた。


窓の外から、否、家の周囲から、途切れることのないざわめきが、美菜の不安を更に煽りたてる。


美菜はカーテンを開け、絶句した。


空が、真っ赤に焼けただれている――


半ば放心状態に陥った美菜に、途切れ途切れ柚江の金切り声が聞こえた。


そして、バアンと派手な音を立て、達也が美菜の部屋に入ってきた。


「美菜!」


達也はグイッと美菜の腕を掴み、部屋から引っ張り出す。


「何? なんなの?」


普段なら、ノックもせずに勝手に部屋へ立ち入ったことに対して何かしらの罵声を浴びせるところだが、そんなことをする余裕なんてないと本能的に悟っていた。


美菜自身にも全く余裕がなく、わけもわからないまま達也に引きずられ、階段を転がり落ちるようにして玄関へと連れられていくに任せる。


外へ出ると、近所のおじさんおばさんたちが、各戸に声を掛け合っていた。


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