白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
紗枝の気持ちはあせるものの、それをいかんともできない自分が歯がゆかった。
(生きる・・・そのことでその答えが出るのですか?)
紗枝は心の中の自分に、そしてあの夜の常篤に問いかけた。
涙があふれて止まらない。紗枝は身体中のすべての水分を涙にして流してしまうのではないかと錯覚するほどに泣いた。

「とにかく、今一度、今一度だけ常篤様におあいしとうございます!」
一時泣いて、少し落ち着いた紗枝は佐助にしがみついて頼んだ。
「・・・わかりました。参りましょう。」
佐助はそういうと、紗枝を馬に乗せ、常篤の屋敷へと向かった。
常篤の屋敷についた紗枝が、屋敷の中へ駆け込むと、そこには点々と血の跡があった。その血の跡は、庭の井戸のところに続き、途切れていた。
(まさか・・・井戸に身を投げられて!)
紗枝が井戸に向かって走りよる。

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