KEEP OUT!!

「おこらないの?」

 おずおずとたずねるわたしに彼女は、

「どうして?」

 と逆に聞き返す。

「だって……」

 彼女の気持ちをずっとずっと前から知ってたのに、応援だってしていたのに、今さらになってこんなことを告げたのだ。

 責められて当然。

 けれど八重ちゃんはスカートの裾に気をつけながらベンチに座ると、

「なんとなく、ね。そうじゃないかなぁって思ってたの」

 膝に置いた手を見つめながら怒る素振りなんてまったく見せずにいった。

「覚えてるかなぁ? 前に紗智ちゃんが私の大事にしてたぬいぐるみ、なくしちゃったことがあったじゃない?」

「え? あ、うん……」

 それは確か小学校低学年の頃の話。

 白いふわふわな毛並みの猫のぬいぐるみで、八重ちゃんの家に遊びにいったときにわたしが一目惚れして、

『やえちゃん! 1日だけ! 1日だけかして!!』

 とせがんで借りたのだ。

 そのぬいぐるみは八重ちゃんがお誕生日にお母さんに買ってもらったもので、すごくすごく大事にしてたもの。

 なのにわたしはそれを借りた帰り道。

 ぬいぐるみのふかふかさを楽しみながら歩いていたわたしは前方から向かってくる自転車に気付かずにいて、


──チリリリリンッ!


『え? きゃっ!?』

 不意のベルの音に驚いたわたしはあろうことか、その自転車を避けようとした弾みに川に落としてしまったのだ。

 慌てて土手を駆け降りたときにはすでに遅く。

 あっという間にぬいぐるみは川にさらわれて子供のわたしでは到底助けにいけないところまで流されていた。

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