KEEP OUT!!

 カーペットにまばらに濡れて散らばった染み。

 じわり、と拡がっていくそれに、自分の中に生まれた惨めな感情が重なる。

 時間が経てばやがて消えるだろうか?

 それともそこだけ色が褪せて汚ならしい痕(あと)を遺してしまうだろうか?

 わからない。

「…………」

 携帯の電源をオフにする。

 もしかすると亮平から何か届くといけない。

 そんなことはないだろうけれど、回り回って八重ちゃんから何か届くといけない。

 今、どんな内容にせよ、それを目にすれば最後の何が壊れてしまいそうだった。

「ピアニッシモ……」

 ふと、店のことが頭に思い浮かぶ。

 なんだか、無性に誰かに会いたくなった。

 のろのろと服を着替える。

 本当はベッドに倒れ込んでしまいたかったのだけれど、そうすると二度と起き上がれそうになかったから。

 とにかく、今は独りになりたくない。

 ぼんやりとした頭。

 そこに響く誰かの声。


──助けて。

──たすけて。

──タスケテ。


 自分の声のはずなのに、それはやけに遠くの方から聞こえてくる。

 意識ははっきりしているのに、身体とこころがずれてしまっているような感覚。

 目の焦点がうまく合わせられなくって、何度か頭を振る。

「今いったら、叔父さんに怒られるかな……」

 そう思うと、足が少し──軽くなった気がした。

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