ケイカ -桂花-
朝、教室に入ると自然と宮崎に目がいく。

モノクロのみんなの中にカラーの宮崎がいるみたいに、はっきりと浮かび上がって見える。

目立たない存在だったはずなのに、他の人達とは全然違う。

今まで私の目は何を映していたんだろうか?

ちゃんと機能してたのか?

目が合うと、宮崎は柔らかく目だけでほほ笑んだ。

私も口元に力を入れ、合図みたいに目だけで返す。

言葉は交わさない。


昨日、私の方から頼んだ。

「みんなには内緒にしたい」と。

なんで?って顔の宮崎に、からかわれたりするの嫌だし、とかなんとか言って約束してもらった。

本当はABCDに言うのが嫌だったから。

言ったところで、口では騒ぐけれど、心では何とも思っていない。

今日の天気ほども気にしない。

そんな人に絶対言いたくない。

決して心から騒いで欲しい訳じゃなくて、人形に話しかける趣味は持ってないという事だ。

私の大切な事が安っぽいものになる気がしてもったいない。
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