ケイカ -桂花-
やばっ。

ばっちり目が合ってしまった。

やばい、お母さん達に知らされる前に早く逃げなきゃ。

予想外の事に気は焦るが、足が動かない。

私は愛人と見つめ合っている。

愛人の眠そうな目が、徐々に目覚めていく様に見開いていき、キラッと瞳が光った。

なぜか目が離せなくなって、私は見つめた。

さっきまでのパサついたさえない女とは別人みたいに、みずみずしく生き返って、鋭くこっちを睨んでいる。

この人、なんか、なんか・・・。

覗き見のスリル感じゃない、もっと得体の知れないものが全身の皮膚をチクチク刺激してくる。

逃げなきゃ。

頭の中では警告が鳴り続けているのに、体が反応してくれない。
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