ケイカ -桂花-
「ケイっ・・」

『だから、ハナ、耳痛いってー』

興奮した私とは対照的な呑気な声がもどかしい。

こっちは言ってやりたい事も、聞きたい事も、山ほどあるんだから。

落ち着かなきゃ、と思えば思うほど息が荒くなる。

「なんで・・?なんで急にいなくなったりするんだよっ」

『あー、ちょっと引越し?あの場所飽きちゃったし、家賃高いしさっ』

ケイのわざとらしく弾ませた声が胸をキュッと締め付ける。

そんなばればれの嘘つかないでよ。

「私のせいなんでしょ?私が出入りしてたから。ねぇ、私の・・」

『違うよっっ』

ケイの大声がキンっと耳に響いた。

『そうじゃない。あの店は私のものだから、私が決めたの。
ハナが出入りするのも、閉めるのも。
私が自分の意思で決めた事だから、ハナには関係ない』

「でも・・・」

『でもじゃない。ハナに口出しする権利はない』
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