【コラボ】碧きコ惑のミューゼ~黄昏の彼方~

ノインは慎重に帽子を直した。
帽子の下は、濃い茶色のカツラなのだ。
無造作に伸びた髪を、後ろにひっ詰め
ている。その上に、帽子。
目には、今朝、カツラと同じ色のコン
タクトを入れられた。
怖かったので大騒ぎしたが、目の色を
隠すのはなかなか効果的のようだ。

いろいろな会社を回って試薬を届けな
がら、目的の施設に入り込む。
さすがにノインはドキドキした。
変装をしていても、うつむきがちにな
ってしまう。
研究施設になっているので、いくつも
の研究室があり、普通に誰かが研究を
している。
と、廊下の先で立ち止まった。
知っている、匂いがした。
体の奥底に眠っていた記憶を、強烈に
呼び起こす、匂い。
何だこれ?
カンッ、カンカン
音がして、ノインの体は反応した。

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