光を背負う、僕ら。―第1楽章―
でも伸一君と会話することはほとんどなかった。



日常で使う必要最低限の会話以外は、まったく言葉を交わさないといった現状だ。



他の男子とは喋れる。



だけど、伸一君とは喋れない。



あたしは伸一君のことを好きだと、意識しすぎていたのかもしれない。



いつも伸一君と楽しそうに会話をする女子を見て思う。




あたしもあんな風に喋りたい。



でも勇気が出ないし、何を話していいのかもわからない。



伸一君と会話する子がうらやましい。



伸一君が女子と喋っていると、胸が痛くなる。



だけど、結局勇気を出して一歩を踏み出すことが出来ないあたしは、ただ遠くから伸一君を眺めることしかできなかったんだ。




恋をして、もどかしさを知りました。


恋をして、胸が切なくなることを知りました。



だけどあたしは、何も変われずにいたんだ。





何も変わらぬまま、季節は秋へ。



ひたすら伸一君を眺めることしか出来ないあたし。



でもそのおかげで、伸一君についていろいろとわかってきた。



伸一君はいつも、クラスの中心人物。



男女問わずに仲良く接する伸一君は、誰からでも人気がある。





< 128 / 546 >

この作品をシェア

pagetop