あなたのペット的生活


「では、いってらっしゃい!また終わる頃に着てやるから、しっかりやれよ」

大きな手が私の頭をすっぽりと覆い、思いっきり撫でられた。


行かないで、そんな心の声が届いたかのように孝ちゃんはずっと頭を撫でてくれた。



「もう、やめてよ」

だけど口から出てくるのは可愛くない言葉。



嘘。

本当はもっと触って欲しいのに。


離れていく孝ちゃんの手を惜しむように見ていると孝ちゃんは笑った。


「迎えに来るから」

それだけ言うとまた自転車を漕いでさっき2人で通った並木道を1人で帰ってく。


わかってるよ。

孝ちゃんが何も思ってないことくらい。





離れたくない。

寂しい。

そんな事思ってるのは私だけだよね。




わかってるよ。

だから優しくしないで。


期待させないで。

キュッと唇を噛み締めると、ゆっくり松葉杖を着いて校内に入っていった。





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