ジェネシス(創世記)
怪獣は、至っておとなしかった。人懐っこい。そこへ家の住人が戻ってきた。アーべの次男、ダグだ。妻と子供四人も一緒だった。

実はダグは、父親に勘当されて、一族から邪魔者にされていたのだ。蛇に、喰われてはいなかった。アーべは、ウソをついていたようだ。

 ダグは、ここで農業を営んでいた。アダにとって、作物は勝手に自然に育成されるものだと、思っていた。栽培なんて、考えられなかった。

アダとイグは、数日間ここでダグから農業のことを学んだ。いくつもの野菜の「種子」も、貰い受けた。品種改良すれば、もっと多くの作物、甘みのある美味しい果実が作れることを悟った。

 部落に帰ったアダは、病に倒れた。高熱、悪寒、吐き気、食欲不振、下痢などに苦しんだ。風邪と似た症状だ。

アダが拾った石とは、近年の科学技術の発達により、その青白い光は「放射線」ではないかと推測された。

 部族たちは二人を恐れた。「主」の住む神聖な山を侵した、罪だと。これは祟りに違いない、誰もがそう噂した。二人は、ダグの事は話さなかった。内緒にした。

 暗い洞窟の中で、アダは羊の毛皮にくるまって苦しみもがき、熱にうなされている。親族たちからも見放された。

アーベも族長の立場として、孫息子をかばうことはできなかった。内心は、部族たちの許しを求めたかったことであろう。
 
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