ジェネシス（創世記）
アダの偉業と貢献により、「科学」というものが見つめられようになった。アダの知恵により、部族の生活は大きく変革され専門的な職業というものが、確立されだした。

　アダには三人の息子がいた。長男カイト（農を営む者）、次男アベベ（羊を飼う者）、一０歳以上も歳が離れた三男エルだ。

三人は仲の良い兄弟のようにも見えたが、父アダは、なぜか次男ばかりを溺愛し、カイトには厳しすぎた。アダは長男をやたらと期待しすぎた、家督相続権の責任ある立場を重んじすぎたのであろう。

　厳格にしつけ、育てたつもりだったのだ。それがカイトにとっては不満だった。父から愛されたい、褒められたい、抱き締められたい。

そんな意識が強くなり始めると、父アダに対してではなく、弟アベベに向けて憎悪を、殺意を抱くようになってしまった。

「最悪の憎悪は、親戚たちの憎悪である（タキツス）」

　カイトは衝動的に、アベベを殺害してしまった。アダとイグは激怒し、悲しみに暮れた。アダは、カイトを部落から追放した。アダは一言、伝えた。「悔い改めよ」。
　
その後、カイトは北のはずれにある、ノノ（さすらいあぐねた土地）という場所でひっそりと、一人で暮らすのであった。

　アダにも、そろそろ寿命が訪れた。病に伏せ、寝床で三男のエルに語った。

「父と母を敬いなさい（出エジプト記）」

「父より尊敬すべき者はなく、母より頼れる者はなし（詩経）」

「科学を重んじよ」

自然現象は、全て「主」のなせる技と思うかもしれないが、それは、科学的に検証すれば解明・説明できることばかりだった。

「主」にやたらと頼るなと、言い聞かせた。エルは、父から学んだことを後世の子孫たちに伝えることにした。　

「主の名を、みだりに唱えることなかれ（出エジプト記）」

　つまり「主」にやたらと祈らず頼ることなく、己の力で最善をつくし努力し、自分の力で道を切り開けと言うことであろうか。

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