蝶々結び
境内の前には、たくさんの人達が群がっている。


その少し後ろで、上杉先生と創太があたしを見ていた。


小さく深呼吸をしてから、最初のポーズを取った。


それを合図に、神主さんの笛の音が神社中に響き始めた。


まずは左足を少しだけずらす……


練習を思い出しながら、境内の中で舞い始めた。


外部からの音は遮断され、あたしの耳には笛の音だけが届く。


そんな中、無我夢中でひたすら舞い続けた。


大して激しくも無い踊りなのに、『星の舞』を舞い終えた後は肩で息をしていた。


練習中や過去のお祭りでも、こんなに集中出来た事は無い。


気が付くと、自然と笑みが零れていた。


『星の舞』を見てくれた人達に一礼をすると、一斉に拍手が湧き上がった。


あたしは背中に拍手を受けながら、境内の裏に下がった。


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