蝶々結び
着替える為に離れに戻ると、急に力が抜けてその場にしゃがみ込んでしまった。


「はぁぁぁ……。良かったぁ……」


あたしは全身でため息をついて、誰に言った訳でも無い言葉を発した。


緊張が解けて安心したからなのか、少しだけ手が震えている。


「ちょっとええかな?」


神主さんと奥さんが、ドアをノックして部屋に入って来た。


「あっ、はい……」


返事をしながら振り返って、慌てて立ち上がった。


「七星ちゃん、ほんまに今年で終わりにするん?」


言い難そうに口を開いた奥さんは、寂しそうな顔であたしを見た。


「ごめんなさい……。あたしはもう……」


申し訳なさから、俯きながら小さな声で答えた。


あたしが『星の舞』を踊るのは、今年が最後だった。


それは、あたしが1年前から決めていた事…。


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