蝶々結び
「俺はさっきの須藤を見て、すごいと思った。学校では絶対に見れないお前を見れて、嬉しかったよ」


上杉先生は小さく笑うと、言葉を付け足した。


「大丈夫だ!お前は踊らなくても、皆はちゃんと受け入れてくれる」


そう言った先生の顔は、すごく優しくて…


急に胸が熱くなったあたしの瞳に、涙が浮かんだ。


ずっと不安だった……


学校では上手く友達が作れなくて、唯一親友だと言ってくれた優子に対しても未だに戸惑う事がある。


田舎に来たら、皆が優しくしてくれていたけど…


それは、あたしが『星の舞』の踊り子をやめるのと同時に、失(ナ)くなるんじゃないかって…。


あたしは踊らなくなる事じゃなくて、皆からどう思われるのかが恐かったんだ。


「ありがと……ございます……」


絞り出すように小さく零すと、上杉先生は何も言わずに笑った。


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