蝶々結び
しばらく黙っていたあたしの顔を、上杉先生がまた覗き込んで来た。


「須藤?」


「えっ……?ちっ、違いますっ!!」


「何が違うんだ?須藤だろ?」


自分の考えていた事がバレたのかと思って、焦って否定してしまったけど…


「あっ……そうです……」


上杉先生の言葉で恥ずかしくなったあたしは、平静を装いながら答えた。


「お前、酔ってる?」


意地悪に笑う先生が、あたしよりも随分と大人に見える。


「酔ってません!それ以前に、あたしは飲んでません!」


ムキになって答えながら、上杉先生の意地悪な笑顔に釘付けになって目が離せなかった。


「冗談だよ!さて、俺はまだ飲むか♪」


先生はそう言って立ち上がると、居間に戻った。


あたしは縁側に腰掛けたまま、たくさんの星が輝く夜空を仰いだ。


< 144 / 494 >

この作品をシェア

pagetop