蝶々結び
「どっち?」


上杉先生は、あたしを見ながらニッと笑った。


「罰ゲームで……」


罰ゲームなんて、大した事ないよね……?


そう思ったから、罰ゲームを選んだ。


「ふ〜ん……。まぁイイけど」


上杉先生は海辺で車を停めると、あたしに降りるように促した。


「どこ行くんですか?」


「まぁイイから♪それより転ぶなよ!」


「はぁ……」


あたしは不思議に思いながら、上杉先生の後ろを歩いた。


夕方の海は人が少なくて、何だか寂しくなる。


波の音に耳を傾けながら、上杉先生の足跡を辿ってみた。


先生の靴の跡を一歩一歩踏みながら、ゆっくりと歩く。


同じ歩幅で歩ける事が、すごく幸せ。


「どこまで行くんですかー?」


しばらく歩いた後、少し先を歩く上杉先生に向かって叫んだ。


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