准教授 高野先生の結婚
始まりのキスにはいつも特別なドキドキがある。
唇が触れ合う寸前の体が強ばるような緊張と、
唇が重なり合った瞬間の解けるようなとろけるような甘い弛緩。
ゆっくりと離れる唇にうっとり余韻を感じながら、静かにそっと瞼を開ける。
瞬間――
「おあずけはもう飽き飽きだワン!」
「しりとり、寛行さんの負けなのに……」
にっこりと微笑む彼と目が合って、恥ずかしさから思わずふいと顔を背ける。
まったく、ワンと鳴くヒツジなんて聞いたことがない……。
「負けるが勝ち!なーんて」
“負けるが勝ち”は彼の十八番だ。
「いつも、そうやって……」
「だって朝までしりとりなんてごめんだからね。ほら、君は案外負けず嫌いだから」
そんなことを言いながら彼は私の耳にキスをする。
かすかにかかる甘い吐息が私の声を震わせる。
「今日は……勝った、もん……」
「うんうん。ちゃんと君の勝ちだよ」
彼がゆったり微笑みながら私の髪を優しく撫でる。
結局は――
やっぱり今日も負けず嫌いの私の負け。
いつまでも負けっぱなしの私の負け。
「詩織ちゃん?」
「もう……あおずけ解除です……」
彼の悠然たる態度に観念した私はおとなしく心もカラダも彼にあずけた。