准教授 高野先生の結婚
彼は私にキスマークを付けたことがない。
もう何度もこうしてキスをして抱き合ってカラダを重ねているけれど、一度も。
また、私が彼にそうしたこともない。
けど――
“してみたくはないか?”
そう問われると、ちょっぴり答えに困ってしまう。
おそらく“ぜんぜん”と言えば嘘になる。
“彼は私だけのモノ”
“私の彼に手を出すな”
愚かな優越感と漠然とした不安感。
浅はかな自己満足の自己主張。
恋しい人の肌に付ける自分だけの自分の証(しるし)。
それは、愚かしくもいじらしい乙女心か?
或いは、さもしい女の浅知恵か?
私はそれをしないけど、気持ちはわからなくはない。
教壇に立つことも大事な仕事の寛行さん。
彼の職場は、セクハラ・アカハラにとても厳しい神経質な女子大学。
まわりは敏感で勘の鋭い女子学生だらけ。
そんな彼女たちの前で、首筋の見える場所にキスマークなんてあり得ない。
だけど――