Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
一言、二言。
また沈黙がきて、一言、二言。
そうこうしていると私の家に着いた。
拓哉から誘ってきたから、私は何か言いたいことがあって、それで誘ってきたのだろうと思っていた。
「それじゃ、ばいばい。」
特に何もなかったことに安心していた。
「…………琴音。」
「――えっ拓哉?」
がしっ。と肩を捕まれて無理矢理に唇を重ねられる。
「い……いやぁ!!」
私は無意識にそれを振り払っていた。
何でだか分からない。
分からないんだけど、凄く嫌だった。
私はあの時、拓哉を選んだはずだったのに。
「……白鳥には何回もキスさせといて、オレは嫌かよ。」
「だって、そんな無理矢理。」
拓哉は乱暴に振り返って、背中越しに言う。
「あの時お前はオレを選んだはずじゃなかったのかよ。……何なんだよ。」
うつむきながら拓哉が歩いていく。
どうしようもなくて、私はその場に座り込む。
手足に力が入らなくて、でも頭の中には必死に振り払ったはずのそれが渦巻いていて。
その日の夜から体調を崩した私はそれから二日間、学校を休むことになった。