Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
校庭を無言で通り過ぎる。
「……ナイスショット!!白鳥!!」
そんな声が聞こえて、私はテニスコートの方を見た。
真剣な表情でコートを駆ける優斗。
動いていると邪魔になるからだろうか、白いガーゼは取られ、青いアザが露出している。
「…………。」
拓哉にも声は聞こえてたと思う。
だけど拓哉は一度たりともテニスコートを見ることはなかった。
「早く帰ろうぜ。」
「……うん、そうだね。」
私は何かを振り払う様にしてテニスコートを背に歩きだす。
それはきっと後悔とか不安とか心配とかそういう感情で、いくら振り払っても。
私の胸の中から消えることなどないのに、必死にもがくように……ただ。
ただ……