雲間のレゾンデートル
 せり上がってくるおかしな気持ちに釣られて喉から小さく笑いがこぼれた。

 それに気付いた隆ちゃんは眉間に軽く皺を刻む。


「お嬢、どう――」

「ねぇ隆ちゃん」


 いつも通りだけどどこか訝しむ隆ちゃんの声をあたしの声で遮る。

 だって聞きたくないんだもん、続きの言葉。


 ゆっくりと、おかーさんの写真がある仏壇から離れ隆ちゃんの前へと進む。

 フワフワと軽く感じる体を前に進めながらあたしは濡れて少し重たいシャツに手をかけた。

 濡れたシャツってボタンが外しづらい。
 ひとつ、ふたつと上からボタンを外していると隆ちゃんが慌て始めた。
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