しずめの遭難日記
 私が目を覚ました時、枕元にそう綴られた日記が置いてあった。
「そんな!神楽さんッ!」
 私はかけてあった寝袋から飛び起きた。しかし、すでに神楽さんの姿はどこにもなかった。
「神楽さーんッ!」
 私は、吹雪の中、神楽さんの名を叫んだが、私の声は虚しく、吹雪の音に掻き消されるばかりだった。
 それから、私は独りぼっちの時間を過ごした。
 話す相手も誰もいなく、迎えにくる影すら見えない。吹雪は一行に止む気配もない。
 私は、神楽さんが置いていった防寒着にくるまり、ただじっと、誰もいなくなった洞窟の中で座っていた。
 一人になると、急に温度が下がったように思えてくる。手足はジンジンと悴んできて、意識すら朦朧としてくる。
 その日、私は残された食料のチョコレート一欠片を口にして眠りについた。
 このまま、明日になっても目が覚めなかったらどんなに楽だろうか?そんな事を考えながら…。

 ―3月1日―
 今日から月が替わった。しかし、相変わらず吹雪きは止まない。
 しかし、昨日よりは天気も回復してきたようで、若干、外の景色が明るくなったように思える。
 しかし、父が助けを呼んで迎えに来てくれる事は今日もなかった。そして、昨日出ていった切りの神楽さんも戻ってこない。
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