【天使の片翼】
・・お父様、ね。
父親にべったりの、ファラらしい意見だが、
ソランの眉間にしわを刻むには、充分なものだ。
・・どうせ僕は、頭が固くて、かっこよくなくて、
お姫様を守る騎士としては、役不足なんでしょうよ。
自分の言葉が、幼馴染を奈落の底に突き落としているなどと、気づきもしないファラは、
さっさと馬車から降りて、4頭だてを3頭だてにしようと動いている。
「いいかげんにしろよ、ファラ。
これは、遊びじゃないんだぞ。
もしも、ホウト国とカナン国の間にひびでも入ったら。
それでなくても、両者の関係は、あまりいいとは・・・」
他の兵士たちに聞こえぬよう、ファラの耳に小声で囁く。
すると、逆に、ねだるような甘えた仕草で、ファラは、ソランを見上げた。
「ソランは、私を、窒息しそうな馬車の中に、閉じ込めておきたいの?
これから先の長い年月、それに耐えろって言うの?
もしかしたら・・・、
馬に乗るのは、これが最後になるかもしれないのに・・・」