【天使の片翼】
強引に、父王の執務室に入ってきた王女--ファラは、まだあどけなさの残る、かわいらしい少女だ。
美しい銀の髪は、母親譲りなのだろうか。
朝日を受けて、きらきらと輝いている。
彼女は、重臣からも、あつい信頼のある、王の机に手を付き、父の顔を見下ろすように睨みつけた。
「お父様。どういうことです?」
雛鳥がさえずるように、かわいらしいが、しっかりと怒気が含まれたその声。
「どういうこと、とは?」
ファラの訪問の理由をわかってはいたが、とりあえず、とぼけた。
ほんの少しでも、間をおいたほうが、怒りが静まるだろう、と思ってのことだったが。
「わかってらっしゃるでしょ!
私の結婚の話です!!」
逆に、火に油を注ぐ結果になってしまった。
ファラは、信じられない!と叫んで、さらにまくしたてる。
「どうして、当人に内緒で、話が進んでいくんです!
しかも、相手が、隣国であるホウト国の王子だなんて・・・。
政略結婚です、って、顔に書いて歩いているようなものではないですか!
一体どういうおつもりなのですか!」
「誰からその話を聞いた?」
王は、自分の背後で、警備をしている男に、ちらりと視線を投げかける。
胡乱な視線を受けた男は、慌てて目を逸らした。