【天使の片翼】
「行きます!」
「え?」
「私、行きます!お父様。
それが、カナン国のためになるのでしたら、迷っている時間がもったいないわ。
それに、ひょっとしたら、相手の方を気に入るかもしれないし。
あ、お相手はどんな方なのですか?
ひょっとして、すごく年上の、ハゲでデブとか、そんな感じですか?
あぁ、それはあまり嬉しくないけれど。でも、人を見た目で判断してはいけないし。
わかりました!私、相手がどんな方でも、きっと愛してみせます!」
我が娘ながら、この立ち直りの速さは何なのだろう。
握りこぶしで主張するファラを見て、王は、苦笑した。
・・それにしても--。
愛してみせる、ね。
どうやら、ファラは、思った以上に幼いらしい。恋を知るのは、当分先になりそうだ。
嬉しいような、悲しいような。
口元に微笑を浮かべ、王は、複雑な気分で、再び娘の頭を撫で始めた。