焦れ恋オフィス
二人の間に漂う緊張感が耐えきれなくて、
「そんなこと言っても、飲み会でかわいい女の子がいたら帰ってこないくせに。待ちぼうけは嫌だから、自分の部屋に帰るよ。
それに、女の子を連れてこの部屋に帰ってこれないよ」
私は明るく言って、意識した笑顔を作って 立ち上がった。
「この部屋に芽依以外の女を連れてきた事なんてない。それに、ここ一年はお前以外の女は抱いてないぞ」
「え……?」
苦しげに呟く夏基の言葉に嘘は感じられなくて、はっとその顔を見遣った。
「……まぁ、確かに飲みに行ったり遊びに行ったりしてるし、芽依じゃない女を抱こうとした事もあったけどな」
思い返すような言葉を呟いて。
ソファにもたれて苦笑する夏基の顔は何だか悲し気で、涙は流れていないけれど、まるで泣いているように見えた。
隣にいる私をそっと見る夏基は、どこか投げやりな感情を隠すわけでもなく。
私の頬をそっと撫でた。
その熱に一瞬飛び込んでしまいそうになる自分の気持ちにぎゅっと蓋をして、私は苦笑した。
「そんなに好きだったの?別れた彼女の事。
他の女の子を抱けないほどに、別れた彼女が忘れられないの?」