焦れ恋オフィス
傷ついている気持ちを隠しながら目を逸らす私は、こうして夏基の側にいる事だけで満足しながら生きているけれど。
それすらもう無理なんだと、ため息をそっと抑えて唇をかみしめた。
夏基への気持ちを今更悟られるわけにはいかないから。
そんな私に向かって、夏基は投げやりに言葉を落とした。
「……芽依にとっても、俺は本命の男じゃないだろう?」
「え……」
「不倫に疲れて逃げてくるだけの男だろ?……俺は」
一気にそう言った夏基。
言った途端に苦しく眉を寄せている姿は、本気でそう思っているんだと改めてしらされて。
私への刃は更に深く深く。
そう思われている事はわかっていたけれど、こうはっきり言われると、感情を殺して苦笑するしかない。
今になって真意を告げるつもりもないから。
「悪い……。言うつもりはなかったんだ」
力なく謝る夏基は、言ってしまった自分を責めているように大きく息を吐く。