焦れ恋オフィス
「俺が『KH建設』に入ったのも大賞を獲りたいっていう気持ちがが大きかったからなんだ。
コンクールにチャレンジする事を会社全体でバックアップしてくれるって知られてるからな……。
俺が何より仕事を頑張るのはそのせいかもな。
どんなに仕事がつらくてもこの会社を辞めたいなんて思わないし」
穏やかに聞こえる声が、私の体に自然に染み入る。
どんなに忙しくても、そして体調が悪くても、仕事だけは手を抜かない夏基の姿勢は、飲み会や女の子達と一緒にいる時とは全く違っている。
飄々とした笑顔の奥深くに隠されている、つかみきれない部分がいっぱいだと感じていたけれど、その理由がわかった気がした。
大切な人の思いを叶えられない苦しみと引き換えに、自分の人生を自分で決めた覚悟があったんだね。
どれだけの強さが必要だったんだろう。
きっと、家族の事が大切で大好きで、できれば家族の希望に寄り添っていければ、と。
何度も悩んだに違いないのに、自分の将来を自分に正直になって決めた夏基。
本当。
これ以上好きになりたくないのに。