言霊師
…ガシャーーーン
時計の文字盤が割れる音が、放課後のキャンパスに響き渡った。
「……危なかったな。」
真下にいたムメは、一言主に手を引かれ、怪我一つせずに助けられた。
そして今、彼にしがみつくように立ちながら、優しく頭を撫でてくる手に安心して泣きそうになるのを必死で堪えていた。
怖かったからだけではない。あんなに危機迫る時でも、自分は一言主の事を考えてしまうのだと思い知らされたから。
神を守る立場にあるはずなのに、守られて良いわけがない。
それでも今は、せめて今日だけは。
この気持ちに正直になりたい。
そう思った。