言霊師
時計台に大勢の人が集まって来るが、神は確かに一人の姿を捕らえていた。それは、二人に視線を送っていた者とは違った。一言主が側にいるにも関わらずムメを狙ったのは、別の人物だ。
だが、それを彼女には伝えない。嫌な予感がするから。
「…大丈夫か?」
「はい。」
「良かった。…歩けるな?」
「えぇ、何とか」
集まった人々は、柱に鋭利な切り口があるのを見つけ、更に騒然となる。その場に誰が居たのかと叫ぶ教授の声がかき消されて、言霊だけが虚しく宙へ消えていくのを見ていたムメの手が引かれる。
そのまま、人の流れに逆らうように、二人は門へ歩き出す。
「行こう。此所にこれ以上いる必要はない。」
手は、
繋がれていた。
だが、それを彼女には伝えない。嫌な予感がするから。
「…大丈夫か?」
「はい。」
「良かった。…歩けるな?」
「えぇ、何とか」
集まった人々は、柱に鋭利な切り口があるのを見つけ、更に騒然となる。その場に誰が居たのかと叫ぶ教授の声がかき消されて、言霊だけが虚しく宙へ消えていくのを見ていたムメの手が引かれる。
そのまま、人の流れに逆らうように、二人は門へ歩き出す。
「行こう。此所にこれ以上いる必要はない。」
手は、
繋がれていた。