言霊師
二人がいなくなった後、ゆっくりと事故現場に歩み寄る男が二人。
一人は、怯えたように、倒れた時計を見ている。
だがもう一人は、楽しい気分を隠そうともせずに満面の笑みを浮かべて現場を見ていた。


「分かった?…こんな風にやれば良いんだよ♪」


「……」


「今回は、例を示したかっただけだから失敗しても仕方ないでしょ。んー…でも、アイツが隣りにいなければ成功してたりして!ねぇ?」


音量は小さめだがやたらとテンションが高い声に返事をしかねているのは、ムメ達を見ていた男だった。怯えた目は、時計よりもむしろ自分の前に立つ者へ向けられているのかもしれない。


「どうした?まさか、ビビったとか?」
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