言霊師
そういった経緯で勇次が言霊遣いとなり、その掟に怯える毎日を送り始めた丁度その頃、正式に一言主から認められた新たな言霊師が誕生した事を、勇次も悠も知らない。

その新人が、やはり同大学、同学年だという事も、一言主からの守護を授けられた事さえも、知らない。

だから当然、自分が標的としている女―――ムメと知り合っているなどという事は、想像すらできないだろう。

それ故か、勇次は口元を吊り上げた。

―――相手は、女一人。今日の様子だと、あの神がいなければ案外簡単に殺れるな。


先程までの弱々しい顔は、今や狡猾そうな表情へとすり変わっていた。
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