言霊師
「あれは…貴方、だったんですか―――」


特殊な力を授かる為に訪ねて行った、一言主の祠。その時、初めて会ったはずの神に強く心が惹かれたのは

一度、出会っていたから。

ずっと、見守られていたから。


神は常に、側にいたから。


「一言主様…あ、あの、私…ッ私、ダメだって分かっているんですけど、貴方の事…」


想いを告げようとしたムメの周りに、ザワ…と、いつかと同じ風が吹き、言葉を飲み込んだ。
いや、発する事が出来なかった。


「それ以上は言霊にするな。」


ムメは、一言主に強く腕を引かれ、抱き締められたのだ。急な事で、言葉だけでなく呼吸さえも一瞬止まる。
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