言霊師
二人の姿を何かから隠すかのように、風が木の葉を空に踊らせる。
当然、追跡してきた言霊遣い―――勇次は、その場所にすら辿りつけない。
坂を下りた所で急に途絶えた気配に焦り、曲がり道で険しい顔をして立ち尽くしていた。
「クソ…ッ!!!あの忌々しい神め…必ずあの女を…」
彼は、そう悪態をつくだけでは飽き足らず、信号機に禍々しい言葉をぶつけたのだ。
「“砕”!!!」
一文字の漢字で表された言霊は、普通の言霊よりも強い呪となる。目の前の信号機は、根元が砕けて道路へ倒れた。