言霊師
この力を授かってから一番辛かったのは、人の本心が視える事だった。
知らなくても良い事がこの世にはたくさんあったのだ、と日々実感してきた。

虚しさに苛まれるうちに、諦めや不信が満ちていく。
何故言霊師になったのか、その理由すら霞んでいった。


それでも、確かに言霊はそこに存在している。本心であれ何であれ、生まれた言霊が自分を慕う限り、愛すべきだ。

そう諭してくれたのは、かの神だ。

そのおかげで、今の自分がある。


勇次を駅のベンチに座らせ、ふと顔を上げると、大学祭のポスターが目に入った。

11月の最初の土日。

その日までに、ムメを狙う奴等は色々と仕掛けて命を狙うだろう。
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