言霊師

「良い感じに、勧善懲悪な展開になると良いんだけどね。
…あ、起きた?」


時代劇のラストで敵が平伏すように、上手くいかないか…と考えていると、勇次が目を覚ました。声を掛けたのだが返事はなく、顔を覗こうとしたところ、


「大丈夫だ。」


思い切り顔を背けられてしまった。その態度に多少腹は立ったが、相手の調子が悪いので大目に見る事にしたヒョウリは、気付くと思い切り勇次から睨まれていた。


「何?」


「…何者なんだ?本当に、あんたは奴と無関係なのか?!」


「ちょっ…いきなり何を…」


「思い出したんだ。あの日の事をはっきりと!朧気だった顔や表情まで、な。
確かに、歳は向こうの方がかなり上に見えたけど…
―――奴は、シンは、あんたにそっくりだった。」

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