言霊師
ヒョウリの顔から、表情が全て消え失せる。
聞き取れない程の小さな声で聞き返すが、その瞳はもう勇次どころか何も映してはいない。
「そっくり…?」
「笑い方を見て、奴の事を急に思い出した。普通にしてるとそんなに似てないから気付かなかっただけで、笑うとそっくりだ。…兄弟でもいるのか…?」
「笑うと、そっくり…」
「ど…どうした??」
呆然とした様子のヒョウリに、知り合いだとしても自分が裏切った事を向こうには言わないでくれ、と頼もうとした言葉が止まる。勇次がふとヒョウリの手元を見ると、拳が固く握られていた。
「―――勇次。」
「え?」
「シン―――“慎”は、僕の従兄弟だ。
…あいつは…僕の大切な人を奪ったんだ…っ!」
唇を噛み締めるヒョウリは、幼子のように見えて。
勇次は声を掛けられなかったのだった。
聞き取れない程の小さな声で聞き返すが、その瞳はもう勇次どころか何も映してはいない。
「そっくり…?」
「笑い方を見て、奴の事を急に思い出した。普通にしてるとそんなに似てないから気付かなかっただけで、笑うとそっくりだ。…兄弟でもいるのか…?」
「笑うと、そっくり…」
「ど…どうした??」
呆然とした様子のヒョウリに、知り合いだとしても自分が裏切った事を向こうには言わないでくれ、と頼もうとした言葉が止まる。勇次がふとヒョウリの手元を見ると、拳が固く握られていた。
「―――勇次。」
「え?」
「シン―――“慎”は、僕の従兄弟だ。
…あいつは…僕の大切な人を奪ったんだ…っ!」
唇を噛み締めるヒョウリは、幼子のように見えて。
勇次は声を掛けられなかったのだった。