言霊師
――――――
「一言主様。此所は、昔と変わってないんですね。
日が落ちると何も見えなくなって…言霊と自分しかいない世界になる。なのに、この場所を怖いと感じた事はありませんでした。」
日没までの僅かな時間を惜しむかのように、ムメはそう一言主に声を掛ける。
ムメはヒョウリと勇次が接触した事すら知らないし、それを把握していた一言主でさえ、ヒョウリの思惑を知る事はなかった。
「今思うと、怖くなかったのは、貴方が側にいて下さったからなんでしょうか…?」
「それはどうかな?そなたは、かなり恐いもの知らずだったからね。」
「そんな事…っ」
実は、こんな会話はもう何度か繰り返されていた。
二人は、まだ思い出の場所から離れられないでいるのだ。そこでは、誰の干渉も、監視も…束縛さえも届かない所にいるかのように思えたからだった。
「一言主様。此所は、昔と変わってないんですね。
日が落ちると何も見えなくなって…言霊と自分しかいない世界になる。なのに、この場所を怖いと感じた事はありませんでした。」
日没までの僅かな時間を惜しむかのように、ムメはそう一言主に声を掛ける。
ムメはヒョウリと勇次が接触した事すら知らないし、それを把握していた一言主でさえ、ヒョウリの思惑を知る事はなかった。
「今思うと、怖くなかったのは、貴方が側にいて下さったからなんでしょうか…?」
「それはどうかな?そなたは、かなり恐いもの知らずだったからね。」
「そんな事…っ」
実は、こんな会話はもう何度か繰り返されていた。
二人は、まだ思い出の場所から離れられないでいるのだ。そこでは、誰の干渉も、監視も…束縛さえも届かない所にいるかのように思えたからだった。