言霊師
―――日が沈むまで、此所に居ようか。

数刻前、泣いてしまったムメを優しくなだめながらそう言った。その言霊は、この場所に居られる時がもう残り少ない事を知らせてくれる。


「今は、どうだ?」


「え…?」


「今も、怖くはないのか?」


「―――いえ。
このまま一緒に居る事が出来ない…別れる時が来るのが、すごく怖いです。」


ムメも、帰らなくてはならない時が来るのを分かっていた。それでも何気ない会話を続けているのは、必ず、またすぐに逢えると信じているから。
どんな邪魔が入ろうが、絶対に、


「また、すぐに逢えますよね…?―――あ、その…ヒョウリの所に行くくらいなら、私の所に来ても、全然構わないというか…」


素直な気持ちを吐露するのが苦手で赤くなったムメの隣りへ行き、一言主はその肩を引き寄せた。
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