言霊師
――――――

その日、結局ヒョウリとムメは会わなかった。
次に会う約束もしていなかったが、一言主経由で伝えてもらおうと考えていたヒョウリは突然の事態に戸惑っていた。

自分が知り得た事や、気をつけて欲しいという事を教えたかったのに、肝心の一言主と連絡が取れないのだ。

その異常に気付いたのは、日が完璧に暮れた18時過ぎ。その時刻は、ヒョウリは知らないが、丁度ムメと神が別れた直後。

ムメとの事を報告に来ると待っていたのだが、来る気配がない。割と短気なヒョウリは一言主を呼び出そうとしたのだが、呼べなかった。
来れないのなら、そう返事があっても良いはず。なのに、何の言霊も返って来ない。

それに、返事だけではなかった。

彼の気配が、何処にも見つけられないのだ。
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