言霊師
葛城から、我が屋敷に移れ。


そう命を下され、抗える訳もなく。

喩え、その目的が自分を監視下に置く為だと知っていても、自分の意見など聞入れるような相手ではない。


そうして、神はその身を再び―――以前よりも深く、執拗に

囚われたのだった。




「……済まぬ…ヒョウリ…。私はもう、何も…何も出来ぬのだ…」



与えられた部屋で呟いた悲痛な一言主の言葉は、言霊となり翔けて行く。


翔けて―――
この檻の外へ―――

「何処へ行くつもりだ。」


しかし、神を縛る男から逃れられたのは

ほんの一言だった。
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