言霊師
慎は酷白な笑みを手向け、自分が聞いた通りに昔噺をし始めた。
夜の色はいよいよ深くなり、太陽が昇っていた名残など何処にも見つけられない。


「他国に出向いていた一言主は、異変に気付き葛城の祠へ戻った。そこで見たのは、己を護っていた一族が皆死に絶えている姿だった。
祠の周りで事切れた彼等を前にし呆然とする一言主に、悠然と骸を見下ろす者―――当時の賀茂家当主と、彼が仕えていた藤原氏が声を掛けたのだが……怒りに身を焦がした神は二人を消そうと呪詛を放った。
それが、罠だと気付かずに、な。

当主は、予め呪詛を仕込んでいたのだ。故に一言主は、自らの呪が跳ね返り、その場に、倒…」


「―――そう…その場に倒れたのだ。」
< 186 / 235 >

この作品をシェア

pagetop