言霊師
一瞬なのか、瞳の色が元に戻った一言主は、無意識に口をついて溢れる言葉を抑えられなかった。
―――思い出した…
「だが、怒り冷め遣らぬ私は……賀茂にでは、なく…祈るような思いで…あぁ、そうだ…本当に―――ただ、ただ…助けたくて……っ」
「…一言主は、捕えられる一瞬の隙をついて黄泉返りの術を掛けた。
その代償として、返った者達が背負うべき咎などには見向きもせずに。
まぁ、直接手を下された長老だけは、黄泉に取り残されたがな。」
言葉の続きを繋いだ慎に視線をやる事もなく、一言主は瞳を閉じる。荒れていた心が、今は嘘のように凪いでいる。それは、落ち着いたと言うよりは、むしろ―――
「…心が砕けたのか…?
…フン、愚かな…面白くない。
だから墜ちた神などと陰口を叩かれるのだ」
縛を解いても起き上がろうとしない神は、愚弄する言葉にも反応しない。
その様子に、つまらない、と吐き捨てた慎は、踵を返し自室に戻って行った。
―――思い出した…
「だが、怒り冷め遣らぬ私は……賀茂にでは、なく…祈るような思いで…あぁ、そうだ…本当に―――ただ、ただ…助けたくて……っ」
「…一言主は、捕えられる一瞬の隙をついて黄泉返りの術を掛けた。
その代償として、返った者達が背負うべき咎などには見向きもせずに。
まぁ、直接手を下された長老だけは、黄泉に取り残されたがな。」
言葉の続きを繋いだ慎に視線をやる事もなく、一言主は瞳を閉じる。荒れていた心が、今は嘘のように凪いでいる。それは、落ち着いたと言うよりは、むしろ―――
「…心が砕けたのか…?
…フン、愚かな…面白くない。
だから墜ちた神などと陰口を叩かれるのだ」
縛を解いても起き上がろうとしない神は、愚弄する言葉にも反応しない。
その様子に、つまらない、と吐き捨てた慎は、踵を返し自室に戻って行った。