言霊師
咄嗟に腕時計を見たムメは、まだ一時になっていないのを確認し、内心ほっとする。


それは、その後訪れる緊迫した状態の前の、ほんの僅かな安堵だった。


ヒョウリが散らした言霊をそのままにするか否かを話す彼女は、言霊遣いに狙われているという現実から目を逸らさず、立ち向かうつもりだ。

当然ヒョウリも自分を“手助け”してくれるのだ、と。

そう思っている。


けれどヒョウリは違った。
彼は初めから、自分一人で遣い達を始末するつもりなのだ。ムメをみすみす危険に晒す必要はない。


黒幕は、分かっているのだから。


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