言霊師
よく考えれば、本当に唐突で奇妙な質問だ。冷静なムメが素直に答えたのが不思議である。
今から何が起こるか分からない、緊張と興奮が彼女の判断を鈍らせたのかもしれない。或いは、答えずにいられない雰囲気を醸し出していたか。

いずれにしろ、ヒョウリの狙い通りになった事だけは確か。


その思惑とは、ムメに“一言主”という名前を言わせる事だ。


「…すいません、ムメさん。」


そう呟いたヒョウリに目を見開くムメは、自分の周りに漂う空気の怪しさを察するが、もう遅かった。

そうして、瞬きする間に彼女はその場から姿を消してしまった。
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