言霊師
「仕方無いな。
『捜』…僕の代わりに勇次を捜して来てくれる?」


自分で勇次を捜しに行くのは後回しにした方が賢明だと判断したヒョウリは、力を込めた言霊に捜索を頼み、歩き出した。

此所には、一般の人が多過ぎる。特に、今日の大学祭の為に頑張ってきた実行委員を巻き込んだりしたくはない。

だから、決めていた。
言霊を戦う為に使うのは、今日が最初で最後だ。
ならば、自分が言霊師になったきっかけとなった場所で。


そしてヒョウリは、全神経を集中させて先程まで目の前にいた者の名を紡いだ。
常よりも力を込めた言霊は、完璧にムメを再現してみせた。


「ムメさん。わざわざ来て頂いて悪いんですけど…場所、移しませんか?」


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