言霊師
にっこりと微笑む彼女が、まるで本物のムメであるかのように話しかけた。
距離を詰めてきている言霊遣い達には、彼女が本物ではないとすぐにはバレないだろう。誰かの名前を言霊にし、姿を与えるなんて、いくら言霊師とはいえ不可能な事だ。

式神を造り、操るのと似たそれは、陰陽師の業。

ヒョウリが知る限りでは、あと一人、同じ事が出来る男がいる。


今から、その男との因縁の場所に行くのだ。


「じゃあ、行きますか。後ろの人達も連れて。」


「……」


話す能力までは備わっていないのか、ただ頷いた式神の手を取り、駐車場を出て坂を登る。

―――この先には、僕が仕掛けた罠がある―――

式神がチラリと後ろを振り返ると、12~13人が黙々と坂を登っていた。
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