言霊師
「名前は?」
「……ヒョウリです。」
名乗ってから、しまった、と思った。
名前は、言霊師にとって武器にも弱点にもなる、大事な“呪物”のようなもの。
なのに、相手の名を聞く前に名乗ってしまった。
一度放った言葉は、戻せない。自らの名が言霊になって頭上に佇んでいるのを、消す事などできない。
「私は、ムメ。」
間を置かずに彼女―――ムメが名乗らなかったら、ヒョウリはパニックになったかもしれない。