言霊師

それは、静かな夜だった。

戦乱の世には有り得ない程の、穏やかな夜。


そして、
一族が幸せに眠る事の出来た、最後の……。



真の祠に隠れてはいたが、窮屈ではなかった。背丈の短い植物が生えている地面は、円形になっていて、その中心に祠がある。20人程の一族に加え10人程度の人がそこにいたが、狭くなどなかった。

その場所には結界が張られていて、一言主の許可のない者は弾かれる。結界の中を覗き見る事さえ不可能だ。だから、安全な場所。

誰もがそう信じていた。
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